沈黙だけが正しいと言った横顔。

 

痛みが

どこまでも残るよ。

 

 

 

甘えていいよ、なんて

何の為?

 

 

君じゃない君の言葉。

 

私より年下の、君よりずっと年下の君の言葉。

 

君は言葉じゃないね。

 

君は言葉じゃなかったね。

 

 

 

 

君は私を上手に甘やかして

 

すべてを溶かしてくれたね。

 

 

 

 

あいたいよ。

 

 

 

 

 

 

 

君が付けた瘡蓋を剥がして。

気が付いたら君のベッドにいた。

 

酔ったままに

君の部屋まで来たのは覚えている。

 

 

"今夜は一緒に過ごせると思ったのに。"

 

くだらない台詞を吐く

 

くだらない存在の

 

ただただ、埋め尽くすためだけの

 

君の代わりの君の手を離して。

 

 

タクシーに乗って、君の部屋へ向かった。

 

 

呼吸が

 

やっと出来たと思った。

 

 

 

君の腕の中だった。

 

 

 

 

 

好き放題に

仕事の愚痴を放り投げて横たわる私を

抱き寄せながら

 

俺の話には興味ないんでしょ?と

言われたのも

 

覚えている。

 

 

 

そのあとはもう覚えてなんかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて勿体無い事したのかな。

 

 

 

そんな四日前の話。

 

 

ここなら邪魔されずに。

 

真夏の夜。

 

汗で額に張り付いた私の前髪を

指で梳いてキスを落とす。

 

それから少し笑った君を

私は下から見上げていた。

 

重なり合っていた時間は

どれだけの長さだっただろう。

 

不自然な程、長い時間で

君は私の奥に触れた。

 

 

もし、永遠なんてものが存在するのなら

きっとあれがそうだった様に思う。

 

 

永遠だった、という表現自体が

間違っている様な気もする。

 

けれど、

 

あの終わらない感覚は

 

ずっと

時間が反芻されている感覚は

 

永遠だった、

 

としか思えない。

 

 

 

身体の芯が

何処にあったのかを初めて知った。

 

骨が軋む音が

自分の身体の華奢さを教えた。

 

泡立つ肌が

優しく指でなぞられる度に女の肌だと思った。

 

肩に口付けられた圧が

愛しい程に苦しかった。

 

 

 

 

 

熱で浮かされた、様に

 

何度も

 

何度も

 

何度も

 

 

奥が揺さぶられていくから。

 

 

 

 

 

 

 

"もう、戻れない"

 

 

 

そう思った。

 

 

 

 

 

 

心が

 

勝手に泣いていたから

 

 

私は

 

君の身体を強く抱き締め返したんだ。

 

 

 

 

何倍も

 

何倍も

 

きみの心が泣いていた気がしたから。

 

 

 

 

 

 

永遠、だった。

 

 

 

泣いていた。

 

 

 

君を抱きしめた。

 

 

 

私の奥を執拗な程に求めていた君を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つめたい手。

抜けていく。

 

 

心から、すとん、と。

 

 

 

抜けていったことに気付いたから、

 

ああ、このまま抜けていくんだと

 

思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事は

 

私からすべてを抜き去って

 

心を満たす。

 

 

たっぷりと。

 

 

 

 

記憶と圧。

 

寄り添って愛と呼び壊れないと信じていても

錆付いた快楽は何処から期待したって

亡きものなのです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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からっぽの私は

 

仕事をして酒を飲んで

仕事のことばかり考えて酒を飲んで

彼女業務をして酒を飲んで

事実婚生活を続けて酒を飲んで

 

君にあえない日を生きていて

 

 

あんなに苦しいほど

ぞんだ君を

 

もう心の中の記憶でしか

 

あいせなくなってしまって

 

 

その苦しさに

 

また酒を飲んで

 

 

仕事は繁忙期を迎え

 

予算との戦いの中で

 

部下育成の上での意見のすれ違いに

 

神経は摩耗していくから

 

 

また酒を飲んで

 

 

 

 

いつの間にか昔の仲間の店にいた。

 

 

 

そいつは変わらず私を昔の名前で呼ぶ。

 

 

もうあの頃の私はいなかったけど

 

夜の街には私がのぞんでるものが

 

少しだけ落ちていて

 

 

四軒目の店の終わりに

 

また私は圧を受け入れる。

 

 

 

うずくまる背中に

 

数ヶ月前に微笑んでくれたひとの

 

圧。

 

 

 

その後は転がり落ちる。

 

 

 

転がり落ちたその先で

 

頭を撫でて

 

身体を包んでくれた腕の圧。

 

 

 

 

 

君とは違うぎこちなさで

 

君とは違う若さで

 

君とは違う匂いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽炎や蜃気楼の様に。


あのひとが隠し事するなら
それが罪業じゃあないか
なにが不幸か幸せかは
だれもわかりんせん

 

 

勝手に立ち去って行くものを
なにも引き留めないわ
連れてって焼いたり煮たり
さあ、お気に召すまま

 

 

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ああ

 

ビールが美味しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

売上はいつものように

 

当たり前のように

 

一番。

 

 

 

だけど

 

なんだか

 

楽しくないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんにも欲しくない。

 

快楽が消えてしまう?

 

 

 

 

そんなの嫌。

 

 

 

飲まなきゃ。

 

 

酔いたいなあ。

 

 

酔うために

 

飲むのは

 

 

しあわせ、だよ。